コーポレートガバナンス・コードとは?特徴や基本原則5つをわかりやすく解説
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- 7月31日
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目次コーポレートガバナンス・コードとは?特徴や基本原則5つをわかりやすく解説
コーポレートガバナンスコードとは
「コーポレートガバナンスコード」とは、企業が健全で透明性の高い経営を行うためのルールや原則をまとめた指針のことです。主に上場企業に向けて、東京証券取引所が策定しています。
簡単に言えば、「会社がきちんと経営されているかどうかを投資家や社会に示すためのガイドライン」です。
コーポレートガバナンスの意味と目的「ガバナンス(governance)」とは「統治」や「管理」を意味します。企業経営においては、「経営者が勝手に会社を動かさず、取締役会などの監督機能を通じて、バランスよく会社を運営すること」が目的です。
たとえば、不正会計や情報隠しなどの不祥事が起きた場合、その企業の信頼は大きく損なわれます。コーポレートガバナンスは、こうしたリスクを防ぎ、企業価値を長期的に高める仕組みとして注目されています。
なぜコーポレートガバナンスコードが必要なのか特に上場企業では、多くの株主から資金を集めて経営しています。そのため、「誰のために経営しているのか」「会社の方針は誰がチェックしているのか」が明確である必要があります。
コーポレートガバナンスコードは、以下のような理由から導入されています。
投資家の信頼を得るため
経営の透明性を高めるため
不祥事を防ぐ仕組みを整えるため
中長期的な企業価値を高めるため
つまり、企業が社会や株主と信頼関係を築き、持続的に発展していくための“道しるべ”となるのが、コーポレートガバナンスコードなのです。
コーポレートガバナンスコードの特徴
コーポレートガバナンスコードには、他の法律や規則とは異なる独自の特徴があります。特に重要なのは「原則ベースの考え方」によって運用されている点です。
法律ではなく“原則”に基づいたルールコーポレートガバナンスコードは、会社法のような法的拘束力を持つルールではなく、「原則的な指針」として提示されているものです。
つまり、企業にはこの原則を守る努力が求められますが、すべてを厳格に守らなければならないわけではありません。
「コンプライ・オア・エクスプレイン」の考え方ガバナンスコードの最大の特徴は「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」という考え方です。
これは、
Comply(守る):原則を実行する
Explain(説明する):実行していない場合は、その理由を説明する
という運用ルールのことで、企業に柔軟性を持たせながらも、透明性を高めるための仕組みです。
たとえば、取締役会に女性がいない企業が「多様性の観点で課題がある」とされた場合、「なぜ女性登用が進んでいないか」「どのような改善を進めているか」を開示することで、信頼性を保つことができます。
東京証券取引所が策定し、改訂を重ねているコーポレートガバナンスコードは、2015年に東京証券取引所が策定したものですが、時代に合わせて数回の改訂が行われています。
特に近年では、ESG(環境・社会・ガバナンス)や多様性といった新しい価値観への対応も強化されています。

基本原則5つをわかりやすく解説
コーポレートガバナンスコードには、企業が守るべき「5つの基本原則」が定められています。これは言い換えれば、“良い経営”を行うための5つの柱です。
それぞれの内容を、初心者の方でもわかるようにやさしく解説していきます。
原則1:株主の権利と平等性の確保企業は、株主の出資によって成り立っています。だからこそ、すべての株主が平等に扱われ、正しく権利を行使できるようにすることが求められます。
例えば、大株主だけを優遇するのではなく、少数株主(小口投資家)にも情報をきちんと提供し、公平に意見を伝えられる場を確保することが重要です。
原則2:株主以外のステークホルダーとの適切な協働企業は株主だけでなく、従業員・取引先・地域社会・顧客など多くの関係者(ステークホルダー)と共に成り立っています。
そのため、従業員の働きやすさを重視したり、サステナビリティ(持続可能性)に配慮した経営を行ったりすることが、企業価値の向上にもつながります。
原則3:適切な情報開示と透明性の確保投資家や社会が企業を信頼するには、正しい情報が分かりやすく公開されていることが不可欠です。
たとえば、決算書類・経営方針・リスク情報などを適切に開示し、不正がないことを見える形で示すことで、企業の透明性が高まります。
原則4:取締役会等の責務企業経営を任されている取締役会には、「監督」と「意思決定」の2つの役割があります。
つまり、社長(経営陣)が暴走しないように監視しつつ、企業全体の方針を正しく決めていくという重要な責務を担っているのです。
このためには、経験豊富な社外取締役の起用や、経営と監督の分離などが重視されています。
原則5:株主との対話企業は、株主と定期的に対話し、その意見を経営に反映させる姿勢が求められます。
たとえば、経営方針や将来戦略について株主からの質問にしっかり答え、建設的な意見交換を通じて信頼関係を築いていくことが大切です。
以上の5つが、コーポレートガバナンスコードの中心となる基本原則です。これらをしっかり実践することで、企業の信頼性や持続的な成長力が高まります。
コーポレートガバナンスコードは誰が守るべき?
コーポレートガバナンスコードは、原則としてすべての上場企業が対象です。特に東京証券取引所に上場している企業は、ガバナンスコードの内容に基づいた対応が求められています。
上場企業に求められる対応とは?上場企業は、ガバナンスコードに示された原則を守るか、守らない場合はその理由を明確に説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の方針に従う必要があります。
たとえば、
取締役会の構成が多様であるか?
経営戦略が株主に分かりやすく説明されているか?
外部の監督機能が働いているか?
といった点について、投資家や市場に対して説明責任を果たす必要があります。
中小企業や非上場企業にも関係ある?法的な義務はありませんが、中小企業や非上場企業でも、コーポレートガバナンスの考え方を取り入れるメリットは大きいです。
たとえば、
経営の透明性を高める
従業員や取引先からの信頼を得る
資金調達や事業拡大時に有利に働く
といった効果が期待できます。
特に最近では、スタートアップ企業が資金調達の場で「ガバナンス体制の有無」を問われるケースも増えており、企業規模に関わらず意識しておくべき重要な視点といえます。

導入のメリットと注意点
コーポレートガバナンスコードを導入・実践することには、多くのメリットがあります。一方で、形だけの導入では逆効果になることもあるため、注意点も理解しておく必要があります。
導入のメリット以下のようなメリットが期待できます。
投資家からの信頼を得やすくなる 情報開示や経営の透明性が高まることで、株主や金融機関からの信頼度が向上します。
企業価値の向上につながる 適切な監督体制を整えることで、不祥事のリスクが減り、企業の健全な成長が期待できます。
経営の効率化が図れる 意思決定のスピードと質が向上し、社外の専門家からのアドバイスを受けやすくなります。
人材確保やブランディングにも効果あり ガバナンスの整った企業は、優秀な人材に選ばれやすく、企業イメージも向上します。

導入時の注意点ガバナンスコードを導入する際には、次のような点に注意が必要です。
形式だけの導入は逆効果 見せかけの対応では、本質的な改善にはつながりません。むしろ、形だけの体制が露呈すると信頼を失うリスクがあります。
現場とのズレに注意 ガバナンス体制を整えても、現場の理解や運用が追いついていないと形骸化します。実務に根ざした運用が重要です。
継続的な見直しが必要 時代や事業環境の変化に合わせて、定期的に体制や運用方針を見直す必要があります。
導入は企業の成長にとって大きな武器になりますが、“形ではなく中身”が問われる制度であることを意識することが成功のカギとなります。
コーポレートガバナンスコード改訂の動向と今後
近年、金融庁や東京証券取引所によって、コーポレートガバナンスコード(CGコード)のより実効性ある運用を目指す見直しが進められています。
アクション・プログラム2025と「実質化」の流れ2025年6月、金融庁は「アクション・プログラム2025」を公表。形式だけの対応ではなく、企業と投資家双方が実質的な改革を行うことが目指されています。特に、現預金の有効活用(cash-hoarding問題)や、株主総会前の開示環境整備などが重視されています。
英文開示の義務化(努力義務化)2025年4月から、プライム市場上場企業は決算情報や適時情報を日本語と同時に英語でも開示することが努力義務とされました。これにより、グローバル投資家との対話が促進されています。
グループ経営(親子上場)・少数株主保護への注目最新の白書では、親会社と子会社のガバナンス体制の改善や、少数株主保護策の強化が焦点課題として取り上げられています。
役員報酬制度への影響CGコードの改訂により、長期的な企業価値に向けたインセンティブとして、株式報酬を組み込んだ報酬体系が採用傾向になっています。
株主が経営に本格介入する事例が増加2025年の株主総会では、戦略ミスや業績不振を理由に経営陣が退任を迫られるケースが増加。これは投資家の意思がより反映されるガバナンス環境の変化を示しています 。
さらに、東京証券取引所は**少数株主保護の観点からの新ルール導入(委員会設置や独立助言者の開示義務など)**を検討中で、MBOなどの透明性向上を図る動きも出ています。

コーポレートガバナンスコードに関するよくある質問
Q1. コーポレートガバナンスコードと会社法はどう違うの?A.会社法はすべての会社が守るべき法律です。一方、コーポレートガバナンスコードは主に上場企業向けの「行動指針」であり、法的強制力はありません。ただし、守らない場合は理由の説明(エクスプレイン)が求められます。
Q2. 上場していない会社にもガバナンスコードは関係ありますか?A.直接の義務はありませんが、経営の透明性向上や信頼獲得のために導入する価値は十分あります。特に資金調達や企業成長を目指す中小企業にとっては、体制強化のヒントになります。
Q3. ガバナンスコードを導入するのにコストはかかりますか?A.完全に無料でできるわけではありませんが、大きな投資が必要というわけでもありません。社外取締役の選任や情報開示の仕組み整備など、中長期的には企業価値の向上に見合う費用といえます。
Q4. どのようにガバナンス体制を整えればよいですか?A.まずは以下のようなステップをおすすめします。
経営陣に対する監督機能の見直し
社外取締役の導入検討
情報開示の改善(IR活動など)
ステークホルダーとの対話の仕組み作り
すぐに完璧にする必要はなく、自社に合った形で少しずつ整備していくことが大切です。
Q5. コンプライ・オア・エクスプレインって絶対守らないといけないの?A.「絶対に守らなければならない」わけではありません。ただし、守らない場合は、その理由を明確に説明する責任があります。この考え方により、企業に柔軟性と説明責任の両方を求めているのがガバナンスコードの特徴です。
まとめ|コーポレートガバナンスコードは企業の信頼性を高める指針
コーポレートガバナンスコードは、企業が健全で持続的な成長を目指すうえで、欠かせない経営の“道しるべ”です。
特に上場企業にとっては、投資家や社会からの信頼を得るために、このコードに沿った経営が強く求められています。しかしこれは、単なるチェックリストではなく、「企業価値を高めるための仕組み」として活用すべきものです。
初心者の方も、以下のポイントを押さえておけば十分です。
コーポレートガバナンスコードは企業経営の健全性を高めるルール
基本原則は5つあり、企業と社会・株主との信頼関係構築が目的
法律ではないが、「説明責任(エクスプレイン)」が伴う柔軟な制度
中小企業やスタートアップでも、導入によるメリットは大きい
企業の信頼性を高め、持続可能な経営を実現するために、形だけでなく実質的なガバナンス体制の構築が求められています。
ガバナンス体制は一朝一夕には整いませんが、少しずつ取り組むことで、必ず企業の未来を支える力になります。





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