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ABL(売掛債権担保融資)とは?ファクタリングとの違い、メリット・デメリットも解説

  • 執筆者の写真: FA
    FA
  • 7月18日
  • 読了時間: 14分

ABL(売掛債権担保融資)とは?


目次











ABL(売掛債権担保融資)とは?ファクタリングとの違い、メリット・デメリットも解説



売掛債権担保融資



ABL(売掛債権担保融資)とは?

ABLの定義と仕組み

ABL(Asset Based Lending/資産担保融資)とは、企業が保有する「売掛債権」や「在庫」「機械設備」などの流動資産を担保として資金を借り入れる融資手法です。中でも、日本国内では「売掛債権」を担保とするABLが主流であり、売掛金の一定割合をもとに金融機関から融資を受ける形式が一般的です。

たとえば、売掛債権が1,000万円ある企業に対し、金融機関がその80%にあたる800万円を融資する、といった形で資金化されます。借入後も売掛金の回収状況に応じて資金枠が調整されるため、企業の売上に連動した柔軟な資金調達が可能となります。






ABLで担保にできる資産の種類

ABLでは以下のような資産が担保対象となります:


  • 売掛債権(売掛金):得意先からの未回収請求書

  • 在庫(棚卸資産):商品・原材料などの在庫品

  • 機械設備:生産ラインや工場機器

  • 不動産(場合により):他の担保と組み合わせて利用されることも


特に中小企業においては、「売掛債権」を担保とするケースが多く、事業活動で自然に発生する資産を活かせる点が評価されています。






ABLが活用される場面

ABLは、以下のようなシーンで活用されています:


  • 資金繰りが一時的に厳しいが、将来的な売上が見込めるとき

  • 成長局面で仕入れや運転資金が多く必要なとき

  • 不動産などの固定資産が少ないが、売掛金は多く保有している企業

  • 銀行の通常融資では資金調達が難しい場合の補完手段として

従来の信用保証や担保型融資に頼らず、事業活動で生まれる「資産」を活かして資金調達できるのがABLの大きな特長です。






ABLとファクタリングの違い

ABL(売掛債権担保融資)とファクタリングは、いずれも売掛債権を活用した資金調達手法ですが、仕組みや契約形態、資金調達の目的が大きく異なります。以下で具体的な違いを解説します。




資金調達の仕組みの違い

  • ABL(融資):売掛債権を担保にして、あくまでも「借入」として資金を調達します。借りた資金は将来的に返済が必要です。

  • ファクタリング(債権売却):売掛債権をファクタリング会社に売却することで、資金を受け取ります。借入ではないため、返済義務はありません。


この点から、ABLは「借入型資金調達」、ファクタリングは「売却型資金調達」と区別できます。






債権の管理・所有権の違い

  • ABL:債権の所有権は企業に残ったままで、売掛金の回収も企業が行います。

  • ファクタリング:債権の所有権はファクタリング会社に移転し、売掛金の回収も原則としてファクタリング会社が担当します(二社間の場合を除く)。


これにより、ファクタリングでは債権回収に関する煩雑な業務が軽減される一方、ABLでは売掛先との取引関係を維持しやすいという利点があります。






審査・コスト・スピードの違い

項目

ABL

ファクタリング

審査

企業の信用力、債権の質など

売掛先の信用力が重視される

手数料

金利+事務手数料(借入扱い)

売掛金額に応じた手数料(2〜20%程度)

スピード

数日〜1週間程度

最短即日対応も可能

会計処理

負債計上(借入)

債権売却処理、オフバランス化可能


スピードや手軽さを重視するならファクタリング、資金枠の柔軟性や低コストを重視するならABLが向いています。






ABLとファクタリングの比較表(一覧)

項目

ABL(売掛債権担保融資)

ファクタリング

仕組み

債権を担保に融資を受ける

債権を売却して資金化する

所有権

債権の所有権は企業に残る

債権の所有権が移転する

会計上の扱い

借入金(負債)として計上

債権売却、オフバランス可能

審査の対象

企業の財務状況+担保の価値

売掛先企業の信用力

スピード

2~7営業日程度

即日~2営業日程度

コスト

金利+手数料(1~5%程度)

手数料(2~20%程度)

信用情報への影響

あり(借入扱い)

基本的になし

継続利用のしやすさ

売上に応じて枠の拡大可

一括売却が一般的だが継続契約も可







メリット・デメリット



ABLのメリット

ABL(売掛債権担保融資)は、売掛金などの流動資産を活用する資金調達手法として、特に中小企業や成長企業にとって多くのメリットがあります。以下では、ABLの主なメリットをわかりやすく解説します。




売掛金を有効活用できる

ABLの最大の特徴は、通常であれば回収までに時間のかかる「売掛金」を担保に資金を得られる点です。まだ入金されていない請求書を資産として評価してもらえるため、「売上はあるが現金が不足している」といったキャッシュフローの課題を補う手段になります。

例えば、得意先との掛取引が中心の企業であれば、ABLを活用することで売上のスピード感に応じた柔軟な資金調達が可能です。






資金使途の自由度が高い

ABLは通常の銀行融資と異なり、使途を限定されることが少ないため、運転資金や仕入れ資金、事業拡大のための設備投資など、企業の自由な裁量で活用できます。

「一時的な資金繰り」だけでなく、「攻めの経営」にも使えるのが大きな強みです。






長期的な資金調達に向いている

ABLは、債権残高に応じて繰り返し融資枠を設定できる「リボルビング型」の融資が可能なため、長期的かつ継続的な資金調達にも適しています。

これにより、毎回の審査を都度行うことなく、一定の資金枠内で必要な時に必要な資金を得ることができ、安定した資金運営がしやすくなります。






既存の不動産担保や保証枠を温存できる

通常の融資では不動産などの固定資産が担保にされがちですが、ABLではあくまで流動資産(売掛債権など)を担保とするため、既存の不動産担保や他の信用枠を温存できます。これにより、他の融資制度と併用しやすく、財務戦略の幅が広がります。






財務内容の健全化につながる

ABLでは売掛金などの実在する資産を裏付けに資金調達を行うため、担保価値が可視化され、金融機関との信頼関係構築にも有効です。借入の根拠が明確であるため、財務の透明性が高まり、将来的な信用格付けや金融取引にもプラスに作用する可能性があります。






ABLのデメリット・注意点

ABL(売掛債権担保融資)は多くのメリットがある一方で、導入には一定のデメリットや注意点も存在します。導入前に以下の項目をしっかり理解しておくことが重要です。




モニタリング・契約管理の負担

ABLでは担保となる売掛債権の内容や回収状況について、金融機関から定期的な報告・モニタリングを求められる場合があります。これにより、以下のような事務負担が発生する可能性があります。


  • 売掛先の一覧や請求書データの提出

  • 月次の売上・入金報告

  • 与信管理の体制整備


社内に経理・財務の管理体制が整っていない場合、契約維持に負担を感じるケースもあります。






担保資産の評価が必要

ABLでは、売掛債権の「信用力」や「回収見込み」などが厳しくチェックされます。そのため、以下のような点で融資額に影響が出ることがあります。


  • 売掛先が少ない、もしくは信用力が低い

  • 債権の内容が古く、回収見込みが低い

  • 請求書の管理が不十分で証明できない


売掛債権はあっても、担保として評価されなければ、希望する資金を得られないこともあるため、事前の確認が重要です。






一定以上の売上・信用力が求められる

ABLは売掛債権をベースとした資金調達手段であるため、ある程度の「売上規模」や「債権の多さ」が求められます。また、金融機関の審査では、担保価値だけでなく企業そのものの財務状況も見られるため、以下のような条件を満たさないと難しい場合もあります。


  • 継続的な売上がない

  • 債権の金額が少なすぎる

  • 財務内容に赤字や債務超過がある


特に創業間もない企業や、売掛先との取引履歴が浅い企業にはハードルが高くなる傾向があります。






ファクタリングに比べてスピード感に劣る

ABLは金融機関との正式な融資契約であるため、審査や契約書作成、担保設定などに時間がかかるのが一般的です。通常は数日〜1週間程度の手続き期間が必要で、即日資金調達を希望する企業には不向きです。

急ぎの資金繰りが必要な場合には、ABLよりもファクタリングの方が適しているケースもあります。






返済義務があるため慎重な資金計画が必要

ABLはあくまで「融資」であるため、当然ながら元本返済と利息支払いが発生します。仮に売掛先からの入金が遅れた場合でも、返済スケジュールは守らなければならず、資金繰りへの影響が大きくなることもあります。

無理のない返済計画とキャッシュフローの見通しを持ったうえで、導入を検討する必要があります。






ABLが向いている企業・向いていない企業

ABL(売掛債権担保融資)はすべての企業に最適な資金調達方法ではありません。事業規模や売掛債権の状況、経営課題などに応じて、適しているかどうかを見極めることが大切です。




ABLに向いている企業の特徴

以下のような特徴を持つ企業は、ABLの活用により安定した資金調達が期待できます。


  • 一定以上の売上があり、売掛債権を継続的に保有している企業 →売掛債権の回転が早い企業ほど、ABLのメリットを最大限に活かせます。

  • 掛取引(後払い)中心の取引形態が多い企業 →売掛金の発生が日常的な企業は、ABLを通じて運転資金を効率的に確保できます。

  • 事業拡大や新規投資など、長期的な資金計画を立てている企業 →ABLは「リボルビング契約」により、売上連動で資金枠を柔軟に設定できます。

  • 不動産担保や保証人に頼らず、別の資金調達ルートを探している企業 →ABLは流動資産を担保とするため、既存の保証枠を温存できます。

  • 金融機関との継続的な取引を通じて、信用力を高めたい企業 →ABLを適切に活用することで、金融機関との信頼関係構築にもつながります。





ABLが適さないケースとは

一方で、以下のような企業にはABLの導入が難しい、または慎重な検討が必要です。


  • 売掛金がほとんど発生しないビジネスモデルの企業 (例:現金商売、前払い制のサービス業など)

  • 売掛債権の発生件数が少なく、担保価値として不十分な企業 →担保評価額が小さい場合、十分な融資を受けられない可能性があります。

  • 財務状況が著しく悪化している企業や、赤字が継続している企業 →ABLでは債権だけでなく、企業全体の信用力も審査対象となります。

  • 急ぎで資金を必要としている企業 →ABLは審査や担保設定に時間がかかるため、即日資金化には不向きです。

  • 売掛先の信用力が低く、債権評価が難しい企業 →売掛先の支払い遅延や未回収リスクが高いと、担保としての評価が下がります。


ABLは、正しく活用すれば企業の資金繰りを大きく改善する手段となりますが、自社のビジネスモデルや財務状況に合っているかを冷静に見極めることが成功のカギとなります。






注意点



ABLの導入手順と注意点

ABL(売掛債権担保融資)は、通常の銀行融資と異なる特有の手続きや契約管理が必要です。スムーズな導入のためには、事前に全体の流れと注意点を把握しておくことが重要です。




導入までの一般的な流れ

ABLを導入する際の主な手順は以下の通りです。


① 事前相談・ヒアリング(金融機関との接触)まずは銀行やノンバンクに相談し、自社の売掛債権や資産状況、資金ニーズについてヒアリングを受けます。

② 必要書類の提出・売掛債権の調査売掛先の情報、請求書、取引履歴、財務諸表などの資料を提出し、担保資産としての価値があるかどうかを金融機関が審査します。

③ 審査・与信判断担保となる売掛債権の信用性・回収可能性、自社の財務状況をもとに、融資の可否や融資枠の金額が決定されます。

④ 契約締結・担保設定ABL契約を締結し、債権譲渡登記や動産譲渡登記などの担保設定を行います。必要に応じて、リボルビング型契約となる場合もあります。

⑤ 融資実行(資金の受取)契約完了後、設定された融資枠の範囲で資金が実行されます。以後、売掛債権の変動に応じて、追加借入・返済を柔軟に行うことが可能です。






契約前に確認すべきポイント

ABL導入にあたっては、以下の注意点を事前に確認しておくことで、トラブルや運用上のミスを防げます。


  • 売掛債権の質と管理体制を整備しておくこと →請求書の記録・売掛先との契約書・入金確認などの書類が整っていることが望まれます。

  • 譲渡制限条項の有無をチェック →取引先との契約に「債権の譲渡禁止条項」がある場合、ABLでの担保利用ができない可能性があります。

  • 担保設定に関する登記費用・手続きコストを確認すること →ABLでは債権譲渡登記や動産譲渡登記が必要な場合があり、別途費用が発生します。

  • 借入後のモニタリング・報告義務に対応できる体制か確認 →売掛債権の入出金や請求書データの定期提出が求められるケースもあるため、社内の経理・財務体制の整備が重要です。

  • リボルビング型契約の条件・更新ルールを把握する →定期的な見直しや売掛債権の状況に応じた調整が行われるため、契約更新のタイミングなどを事前に確認しておきましょう。


ABLは、一度導入すれば長期的・安定的な資金源となりますが、導入時の書類準備や社内体制の整備が成功の鍵となります。金融機関との丁寧なコミュニケーションを行いながら、自社の状況に合った条件で導入を進めることが重要です。






よくある質問



よくある質問

Q1.ABLは中小企業でも利用できますか?

A.はい、可能です。ABLは、一定の売上規模と売掛債権がある企業であれば、中小企業でも利用できます。特に、掛取引が多く、安定した売掛先を持つ中小企業にとっては、資金調達の有効な選択肢となります。






Q2.ABLとファクタリングの違いは何ですか?

A.ABLは「売掛債権を担保にした融資」であり、借入による資金調達です。一方、ファクタリングは「売掛債権そのものを売却」して資金化する方法です。ABLは返済義務がありますが、ファクタリングは債権売却のため返済義務はありません。






Q3.ABLの審査にはどれくらい時間がかかりますか?

A.通常、審査から融資実行までに3〜7営業日程度が目安です。売掛債権の評価や登記などの手続きが必要なため、ファクタリングに比べるとやや時間がかかる傾向があります。






Q4.ABLで利用できる担保にはどんな種類がありますか?

A.主に以下のような資産が担保に利用されます:

  • 売掛債権(もっとも一般的)

  • 棚卸資産(在庫)

  • 機械設備などの動産※場合によっては複数の資産を組み合わせて担保とするケースもあります。





Q5.ABLを利用すると信用情報に影響しますか?

A.はい、一定の影響はあります。ABLは融資契約であるため、信用情報上は「借入」として記録されます。ただし、適切に返済を続けていれば、信用格付けに悪影響を及ぼすことはありません。






Q6.売掛先に通知されますか?

A.通常のABLでは、売掛先に債権譲渡の登記が行われる場合、通知または同意が必要となるケースがあります。これは契約内容や金融機関の方針によって異なるため、事前に確認が必要です。






Q7.ABLは一時的な利用も可能ですか?

A.はい、可能です。ABLには「スポット型(1回限り)」と「リボルビング型(継続利用)」があり、資金ニーズに応じて選択できます。一時的な資金需要にも柔軟に対応可能です。






Q8.ABLの手数料や金利の相場は?

A.金融機関によって異なりますが、年利3〜8%程度+事務手数料が相場です。売掛債権の信用度や融資枠によって変動するため、見積もりの確認が重要です。



まとめ|ABLを理解して、自社に合った資金調達を選ぼう

ABL(売掛債権担保融資)は、企業が保有する「売掛金」などの流動資産を活用して資金を調達する、非常に柔軟で戦略的な資金調達手段です。借入である以上、返済義務や契約管理といった注意点もありますが、信用力や不動産などに依存せず、事業活動で発生する資産を活かして資金繰りを改善できる点が最大の魅力です。

一方で、ABLはすべての企業に適しているわけではなく、売掛債権の規模や管理体制、資金の使い道などに応じて導入可否を慎重に検討する必要があります。また、同じく売掛金を活用する手段として「ファクタリング」も存在し、それぞれにメリット・デメリットがあるため、目的に応じて選択しましょう。

「売掛債権を活かして資金調達したいが、ABLとファクタリングのどちらが良いかわからない」「自社にとって最適な方法を専門家に相談したい」

──そういったお悩みをお持ちの方は、ぜひファクタリングやABLに詳しい専門家や金融機関への相談を検討してみてください。自社の事業フェーズや課題に合った資金調達手段を見つけることで、成長の加速や資金繰りの安定につながります。

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