業務委託契約書とは?該当する契約と種類をわかりやすく解説
- FA
- 7月9日
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目次
業務委託契約書とは?該当する契約と種類をわかりやすく解説

業務委託契約書とは?基本的な意味と目的
「業務委託契約書」とは、特定の業務を外部に委託する際に取り交わす契約書のことを指します。これは法律上、民法に定められた「請負契約」または「委任契約」に分類されることが一般的です。
なぜ契約書が必要なのか?
口頭でも契約は成立しますが、後々のトラブル防止や証拠確保の観点からも、書面による契約書を作成しておくことが重要です。以下のようなメリットがあります。
契約内容の明確化
誤解やトラブルの防止
裁判時の証拠として利用可能
業務委託契約と委任契約・請負契約の違い
「業務委託契約書」と一口に言っても、実際の契約の性質によって「委任契約」か「請負契約」のどちらに該当するかが変わります。
区分 | 委任契約 | 請負契約 |
主な内容 | 事務処理や役務の提供 | 成果物の完成・納品 |
報酬の性質 | 成果に関係なく支払われる | 成果物が完成した場合に支払われる |
例 | コンサルタント、顧問業務 | システム開発、記事執筆 |
見分け方のポイント
「成果物」があるかどうかで判断
契約文書内で「業務内容」「成果物の定義」を明記することでトラブルを回避

業務委託契約書の主な種類と活用シーン
業務委託契約書には、委託する業務の内容に応じてさまざまな種類があります。以下は代表的な業務とその契約形態です。
システム開発やデザイン業務(請負契約)
プログラムの納品、ウェブデザインの完成など、成果物の提出が求められるケースでは請負契約が一般的です。
コンサルティングや顧問業務(委任契約)
成果物よりも業務遂行そのものが契約対象となるため、委任契約として扱われることが多くなります。
営業代行やマーケティング支援(混合型も)
成果報酬型の請負と役務提供型の委任契約が混在するケースもあり、契約形態の整理が必要です。
雇用契約との違いにも注意
指揮命令関係があると「偽装請負」と判断され、法的リスクが発生する可能性があります。
労働者性が疑われないよう、業務内容・就業時間・報酬形態を明確にしましょう。

業務委託契約書に記載すべき必須項目
業務委託契約書は、後のトラブルを防止するために重要な要素を漏れなく記載する必要があります。以下は、必ず盛り込むべき主要項目です。
契約期間
始期と終期を明確に設定します。
自動更新の有無も記載しておくと安心です。
業務の範囲・内容
業務の具体的な内容、担当範囲、納品物の定義などを明記します。
曖昧な表現は避け、できる限り詳細に記載することで解釈のずれを防ぎます。
報酬と支払い条件
報酬額、支払い方法、締日と支払日の設定
成果物提出後の検収期間や支払時期も明示することでトラブルを回避できます。
成果物の取り扱い・知的財産権の帰属
納品された成果物の所有権や著作権が誰に帰属するのかを明確にします。
二次利用の可否についても記述すると良いでしょう。
秘密保持義務(NDA)
契約期間中および終了後における情報の取扱いに関するルールを定めます。
損害賠償の有無や違反時の対応についても記載しておくと安心です。
再委託の可否
受託者が業務を第三者に再委託することを認めるか否か。
再委託を行う場合の承諾方法も記載すると明確です。
契約解除の条件
どのような場合に契約解除できるか、予告期間、違約金の有無などを記載。
「重大な契約違反があった場合は即時解除可」などの条項も有効です。
準拠法と管轄裁判所
紛争が発生した場合の準拠法(通常は日本法)と、裁判所の所在地を明記します。

業務委託契約書を作成する際の注意点
業務委託契約書を作成する際には、形式的な書面を整えるだけでなく、法的リスクを踏まえた実務的な配慮が欠かせません。
雇用契約と誤認されないようにする
契約形態が曖昧だと、税務署や労働基準監督署から「実質的に雇用契約ではないか」と疑われるケースがあります。
対策例
労働時間の拘束や指揮命令が発生しないように記載
業務遂行の自由度(場所・時間)を契約に明示
報酬の未払い・納期遅延リスクへの備え
トラブルが起こりやすいのが「支払いの遅延」や「成果物の質が不十分」などの問題です。
対策例
分割納品・分割報酬の設定
検収・修正のフローを定める
成果物の著作権・使用権を明確にする
特にクリエイティブ系(ライティング、デザイン、開発など)では、著作権の取り扱いが問題になることがあります。
対策例
成果物の著作権は依頼者に帰属するのか、利用許諾にとどまるのか
公開可否・二次利用の条件なども取り決める
業務委託契約書のテンプレートと雛形の活用方法
初めて業務委託契約書を作成する場合、何をどう書けばよいかわからないという方も多いでしょう。そうしたときに便利なのが、あらかじめフォーマット化された「テンプレート」や「雛形(ひながた)」の活用です。
無料テンプレートの活用例
以下のようなサイトでは、無料でダウンロードできる業務委託契約書の雛形が用意されています。
法務省や中小企業庁の公式サイト
弁護士監修の法律相談サービス(弁護士ドットコムなど)
会計事務所やビジネス系メディアの特集記事
PDF形式やWord形式のテンプレートが多く、自社や業務内容に応じて編集できるものが一般的です。
テンプレート利用時の注意点
便利なテンプレートですが、そのまま使用するだけでは不十分なケースもあります。
注意点
実際の業務内容に即してカスタマイズすることが必須
契約書の内容が実態と一致していないと、トラブル時に法的効力が弱まる可能性あり
最新の法改正(例:電子契約対応など)に準拠しているかを確認する
不安な場合は、テンプレートを元に作成した契約書を弁護士などの専門家にチェックしてもらうのが安心です。

よくある質問
Q1:業務委託契約書がないまま仕事を進めるとどうなりますか?
A:契約書がない状態でも契約は成立しますが、トラブル発生時に「言った・言わない」問題が起こるリスクが高くなります。報酬未払い・成果物の認識違いなど、後悔する前に必ず書面で残しましょう。
Q2:電子契約でも有効ですか?
A:はい、有効です。電子署名法のもとで適切な電子契約サービスを利用すれば、紙の契約書と同等の法的効力を持ちます。弁護士ドットコムの「クラウドサイン」などが代表的です。
Q3:フリーランス側で契約書を用意するのはアリですか?
A:むしろおすすめです。発注側が契約書を出してくれない場合、こちらから雛形を提示することで主導権を持ちやすくなります。自身の権利保護にもつながります。
まとめ|業務委託契約書でトラブルを防ぎ、安全な取引を
業務委託契約書は、発注者・受注者の双方にとって安心して業務を進めるための「ビジネスの土台」です。業務の範囲、報酬、著作権の取り扱いなどを明確にすることで、無用なトラブルを回避し、信頼関係を築くことができます。
テンプレートを上手に活用しつつ、業務内容に応じたカスタマイズを行い、必要に応じて専門家にも相談しましょう。書面による明確な契約こそが、安全で円滑なビジネスの第一歩です。
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