財務会計とは?初心者にもわかる目的・帳票・管理会計との違いを解説
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- 8月5日
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目次財務会計とは?初心者にもわかる目的・帳票・管理会計との違いを解説
財務会計とは?外部向けの“会社の通信簿”
財務会計とは、会社の経営状況や財務状態を「外部の関係者」に正確に伝えるための会計手法です。ここでいう外部の関係者とは、銀行、投資家、株主、税務署など、会社の外にいる利害関係者を指します。
たとえば銀行が融資を検討する際、企業の決算書を見て「お金を貸しても大丈夫かどうか」を判断します。この決算書を作成するためのルールや手順を定めているのが、財務会計なのです。
🔰 補足:会計ってなに?
会計とは、会社のお金の出入りを「記録・整理・報告」する仕組みのこと。財務会計はその中で、法律に基づいて記録し、報告書(財務諸表)を作る役割を担います。
財務会計の目的とは?なぜ必要なの?
財務会計の最大の目的は、企業の経営状況を正確に把握し、それを外部に報告することです。特に以下のような目的があります。
外部への情報提供銀行や投資家などは、企業の決算書(損益計算書や貸借対照表など)を元に、融資や出資の判断をします。財務会計によって作成される帳票は、その判断材料になります。
法的義務を果たすため株式会社などの法人は、会社法や金融商品取引法、税法などにより、一定の会計ルールに基づいて帳簿をつけ、財務報告を行うことが求められています。
経営の透明性を高める財務会計を適切に行うことで、企業の信用力や透明性が高まり、取引先との信頼関係構築にもつながります。
💡ポイント
財務会計は「誰に向けた情報か」が重要です。社外の関係者に対して、共通ルール(会計基準)に従って、正確で比較可能な情報を提供するのが目的です。
財務会計で作成される主な帳票とは
財務会計では、以下のような**「財務諸表(ざいむしょひょう)」と呼ばれる帳票**を作成します。これらは企業の状態を客観的に示す重要な情報源です。
帳票名 | 内容 | 主な目的 |
損益計算書(PL) | 売上・費用・利益の状況を示す | 「儲かっているか」を見るため |
貸借対照表(BS) | 資産・負債・純資産の内訳を示す | 「会社の体力・安定性」を見るため |
キャッシュ・フロー計算書(CF) | お金の流れ(収支)を記録 | 「お金の出入り」を把握するため |
これら3つは「財務三表」とも呼ばれ、企業の経営分析に欠かせません。
🔰 補足:帳票=報告書のこと
「帳票(ちょうひょう)」という言葉は、ビジネス用語で「帳簿+報告書」のことを指します。つまり、財務会計で作る帳票=企業の報告書類と考えるとわかりやすいでしょう。
管理会計とは?経営判断に使う“内部の道しるべ”
「財務会計」が外部に向けた“通信簿”だとすれば、「管理会計」は社内のための“経営の羅針盤”です。
管理会計とは、経営者やマネージャーが会社の戦略や意思決定をするために使う、内部向けの会計情報のことを指します。法律で定められた形式や提出義務はなく、企業ごとに自由に設計できます。
具体的にはどんな内容?管理会計では、以下のような情報を集めて、経営判断に活かします。
商品・サービスごとの採算分析(どの商品が利益を出しているか)
部門別のコストや利益の比較
売上や利益の予算と実績の差異分析
将来の収益見通し(予算管理やシミュレーション)
これらの情報を元に、「この事業を強化するか?撤退するか?」「人員配置やコスト削減をどう行うか?」といった判断が行われます。
🔰 補足:なぜ“自由なルール”なの?
管理会計は社内で活用するための会計なので、会社ごとにカスタマイズできるのが特徴です。Excelでの集計や、BIツールでのグラフ化など、形式も多様です。
財務会計と管理会計の違いとは?【比較表あり】
財務会計と管理会計は、どちらも「会計」に分類されますが、目的・利用者・ルール・活用方法が大きく異なります。以下の表で違いをわかりやすく整理します。
項目 | 財務会計 | 管理会計 |
対象者 | 外部(投資家・銀行・税務署など) | 内部(経営者・部門責任者など) |
主な目的 | 法令に基づく報告・外部への説明 | 経営判断のための分析・戦略立案 |
法的ルール | あり(会社法・会計基準など) | なし(自由に設計可能) |
作成する帳票 | 損益計算書・貸借対照表など | 予算実績表・部門別損益など |
時間軸 | 過去の実績を記録 | 未来の予測・計画も含む |
表現形式 | 定型・数字中心 | グラフ・チャート・比較表など柔軟 |
提出義務 | あり(税務署・金融機関などへ) | なし(社内共有用) |
両者は「役割が異なる」だけで、優劣をつけるものではありません。どちらも企業経営には欠かせない視点です。

それぞれのメリット・デメリット
財務会計と管理会計には、それぞれの得意分野と制約があります。両者を理解することで、経営判断に必要な情報をより効果的に活用できます。
財務会計のメリット・デメリットメリット
会社の信用力が高まり、融資や投資を受けやすくなる
会計基準に基づいており、客観的で信頼性が高い
利害関係者との信頼関係を構築できる
デメリット
形式やルールに縛られるため、柔軟性に欠ける
必ずしも経営判断に役立つ情報が含まれているとは限らない
数値は過去の記録が中心で、未来の予測には不向き
管理会計のメリット・デメリットメリット
自由に設計でき、企業ごとのニーズに対応できる
将来予測やシミュレーションが可能で、戦略立案に活用できる
部門別や製品別の採算性など、経営のリアルな実態が見える
デメリット
会計ルールに基づかないため、第三者からの信用性は低い
担当者によって集計方法が異なると、精度にバラつきが出る
実施に手間やコストがかかることがある
財務会計と管理会計はどう使い分ける?実務での活用例
財務会計と管理会計は、どちらか一方だけでは不十分です。役割を理解し、場面に応じて使い分けることで、より正確な経営判断が可能になります。
活用例1:資金調達
財務会計:銀行融資のために、過去3年分の決算書を提出
管理会計:将来の資金繰りシミュレーションや、返済可能性を部門別に分析
活用例2:赤字事業の見直し
財務会計:全体の利益が出ているか確認
管理会計:商品ごとの採算性を分析し、赤字の原因を特定して戦略見直し
活用例3:経営改善のPDCA
財務会計:期末ごとの損益を確認し、経営結果を振り返る
管理会計:月次で予実差異を確認し、改善策をスピーディーに実行
💡まとめポイント
財務会計は「全体を外部に伝えるための記録」
管理会計は「社内でより良い判断をするためのツール」両方をバランスよく活用することが、企業の成長には欠かせません。

よくある質問
Q1. 財務会計だけではだめなのですか?A. 財務会計は外部報告には必須ですが、社内の経営判断には十分とは言えません。管理会計を併用することで、日々の意思決定や経営戦略の精度が高まります。
Q2. 管理会計は小さな会社でも必要ですか?A. はい、むしろ中小企業や個人事業主こそ活用すべきです。部門別の採算管理やキャッシュフローの見える化など、少人数の企業でも大きな効果を発揮します。
Q3. 会計ソフトで財務会計と管理会計の両方ができますか?A. 多くの会計ソフトは財務会計に対応していますが、管理会計はオプションや自作レポートで対応することが多いです。ExcelやBIツールと組み合わせて運用する企業も多く見られます。
Q4. 財務三表とは何ですか?A. 「損益計算書(PL)」「貸借対照表(BS)」「キャッシュ・フロー計算書(CF)」の3つを指し、企業の経営成績と財政状態を表す基本帳票です。財務会計の中心的な役割を担います。
まとめ|両方の会計を理解して、経営に活かそう
財務会計と管理会計は、それぞれ「外部との信頼関係を築くための会計」と「内部の意思決定を支える会計」という異なる役割を担っています。
どちらか一方だけでは、正しい経営判断や資金繰りの改善は難しくなります。両方を理解し、状況に応じて使い分けることが、企業の成長と持続的な経営のカギとなります。
初心者の方はまず「財務三表」に慣れることから始め、次に「管理会計の視点」で日々の経営を見直してみましょう。数字に強い経営者になることで、会社の未来をより主体的にコントロールできるようになります。





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