財務分析とは?基礎から5つの種類・主要指標まで徹底解説【2025年最新版】
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企業経営において欠かせないのが「財務分析」です。財務分析とは、財務諸表の数字をもとに企業の収益性や安全性を評価し、経営判断や投資判断に役立てる方法のこと。いわば 会社の健康診断 ともいえる重要なプロセスです。
「売上は伸びているのに利益が出ない…」「資金繰りが苦しい原因がわからない…」「銀行融資や投資家からの評価を高めたい…」
こうした課題を解決するカギが財務分析にあります。本記事では、財務分析とは何か という基礎から、5つの分析種類(収益性・安全性・効率性・成長性・生産性)、代表的な指標の見方、実務での活用方法までを徹底解説します。
初心者の方でも理解できるよう、計算式や活用例をわかりやすくまとめました。この記事を読めば、財務分析の基本を押さえ、自社の経営改善や投資判断にすぐ活かせる知識が身につきます。
目次
財務分析とは?基礎から5つの種類・主要指標まで徹底解説【2025年最新版】

財務分析とは?
財務分析とは、企業の財務諸表をもとに経営状況を数値で把握し、経営判断や投資判断に活かすための手法です。「会社が健全に運営されているか」「資金繰りは安定しているか」「将来の成長性はあるか」を評価する“企業の健康診断”ともいえます。
財務分析の対象となる財務諸表には、次の3つがあります。
貸借対照表(B/S):資産・負債・純資産の状況を表す
損益計算書(P/L):売上や利益の状況を表す
キャッシュフロー計算書(C/F):現金の流れを表す
これらを読み解くことで、単なる数字の羅列ではなく「企業の経営実態」を明らかにできます。
財務分析の目的と重要性
企業の経営状況を把握する
財務分析は、会社の収益力や安全性を数値で測定することで、現状を正確に把握できます。たとえば「利益は出ているが現金が不足している」という状態も、キャッシュフロー分析で早期に気づけます。
資金繰りや倒産リスクを見極める
倒産企業の多くは、利益が出ていても資金繰りに行き詰まってしまいます。財務分析で「流動比率」「自己資本比率」を確認すれば、資金繰りリスクや財務の健全性を判断できます。
投資判断や融資審査に活かされる
投資家や金融機関は、財務指標をもとに投資・融資の判断を行います。そのため、企業側も財務分析を実施し、自社の強みと弱みを把握しておくことが重要です。
財務分析の2つの方法
財務分析には大きく分けて 「実数分析」 と 「比率分析」 の2つの方法があります。
実数分析(絶対額での評価)
売上高や利益額など、財務諸表の金額そのものを比較する手法です。同じ会社の過去数年の推移を見れば、成長や停滞の傾向がわかります。
比率分析(相対評価・指標化)
財務諸表の金額を比率化し、効率や安全性を評価する方法です。たとえば「流動資産 ÷ 流動負債」で算出する流動比率は、短期的な支払い能力を表します。
実数分析と比率分析の使い分け方
実数は「規模の把握」に強く、比率は「効率性の比較」に強いのが特徴です。両者を組み合わせて分析することで、より精度の高い判断が可能になります。

財務分析の5つの種類と主要指標
財務分析には代表的に5つの種類があります。ここを理解することが「財務分析とは?」を正しく理解する近道です。
収益性分析とは?
企業が効率よく利益を生み出しているかを評価します。
売上高営業利益率=営業利益 ÷ 売上高 ×100
ROA(総資産利益率)=当期純利益 ÷ 総資産 ×100
ROE(自己資本利益率)=当期純利益 ÷ 自己資本 ×100
高いROEは株主資本を効率的に使って利益を出している企業といえます。
安全性分析とは?
財務体質の安定性を測定します。
流動比率=流動資産 ÷ 流動負債 ×100
当座比率=当座資産 ÷ 流動負債 ×100
自己資本比率=自己資本 ÷ 総資産 ×100
一般に流動比率は200%以上、自己資本比率は40%以上が目安とされます。
効率性(活動性)分析とは?
資産を効率的に使えているかを評価します。
総資本回転率=売上高 ÷ 総資産
棚卸資産回転率=売上高 ÷ 棚卸資産
数値が高いほど効率的に経営資源を活用していると判断できます。
成長性分析とは?
企業の成長スピードを測ります。
売上高成長率=当期売上高 ÷ 前期売上高 ×100
利益成長率=当期利益 ÷ 前期利益 ×100
急成長企業でも利益率が低ければリスクもあるため、収益性とのバランスが重要です。
生産性分析とは?
労働力や経営資源の活用効率を測定します。
労働生産性=付加価値額 ÷ 従業員数
労働分配率=人件費 ÷ 付加価値額 ×100
適切な労働分配率(50〜70%程度)が望ましいとされます。

財務分析の活用ステップ【実務での流れ】
財務諸表を準備する
まずは最低3期分の財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)を用意しましょう。
3期分以上が必要な理由:単年度だけでは景気や偶発的な出来事の影響を受けやすく、企業の本来の実力が見えにくいため。
例:1年だけ黒字でも、過去3年で赤字続きなら経営改善ができていない可能性が高い。
財務指標を算出する
用意した数値から、主要な指標(流動比率、ROE、総資本回転率など)を計算します。
Excelの関数や会計ソフトを使うと効率的
自動でグラフ化してくれるクラウド会計ツールも便利
ポイントは 「すべての指標を算出する必要はない」 ということ。自社の課題に関連する指標を重点的に確認しましょう。
(例:資金繰りが苦しいなら安全性指標、利益率が低いなら収益性指標)
過去との比較を行う
算出した指標を過去数年と比較します。
収益性分析:売上高営業利益率が年々低下していないか?
安全性分析:流動比率が前年より改善しているか?
効率性分析:棚卸資産回転率が下がっていないか?
重要なのは「トレンドを把握すること」。一度数値が悪化しても翌年改善していれば問題ないこともあります。
業界平均や競合と比較する
同業他社や業界平均と比較することで、自社の立ち位置が明確になります。
流動比率が業界平均より著しく低ければ資金繰りのリスクあり
ROEが平均を下回っている場合は資本効率の改善余地あり
棚卸資産回転率が低いなら在庫過多の可能性
公的なデータ(金融庁のEDINETや帝国データバンク、業界団体のレポート)を参考にすると客観的な判断が可能です。
改善策を立案する
分析結果をもとに、改善の方向性を具体的に決めます。
収益性が低い場合:固定費削減・高付加価値商品の開発
安全性が低い場合:借入金返済計画の見直し・増資の検討
効率性が低い場合:在庫管理の強化・営業サイクルの改善
「指標を見ただけで終わる」のではなく、経営施策に落とし込むことが財務分析のゴール です。
継続的にモニタリングする
改善策を実行したら、翌期以降も同じ指標を定期的にチェックします。
毎月の試算表を使って簡易的に分析
四半期ごとに進捗を確認
年次では業界平均との再比較
財務分析は「一度やれば終わり」ではなく、継続的な改善サイクル(PDCA) が重要です。

財務分析の実務活用例
経営改善に活用するケース
財務分析は、自社の経営課題を“数値”で明らかにして改善策を打つのに役立ちます。
事例:赤字から黒字転換した中小企業ある製造業の企業では、数年間赤字が続いていました。財務分析を行ったところ「売上総利益率は安定しているが、販管費比率が高すぎる」ことが判明。→ 営業効率の改善・人員配置の見直しを行い、翌年には黒字転換を達成しました。
💡感覚ではなく、比率分析で「どこに問題があるか」を特定できるのが財務分析の強みです。
融資審査での評価
金融機関は融資判断の際、財務分析によって返済能力を見極めます。
チェックされる代表的指標
流動比率(短期の支払い能力)
自己資本比率(財務の健全性)
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息の支払い能力)
事例:追加融資を受けられた企業あるサービス業の企業は、新規設備投資のために融資を希望しました。銀行は財務諸表を分析し「自己資本比率40%以上」「営業利益率も業界平均を上回る」という結果から、安定した返済が可能と判断。結果、希望額満額での融資が実行されました。
💡融資を受けたい企業は、あらかじめ財務分析を行い、改善ポイントを整理してから金融機関に臨むと効果的です。
投資判断に活用
投資家や株主も財務分析を通じて企業の成長性や収益力を見極めます。
重視される指標
ROE(株主資本の効率性)
EPS(一株当たり利益)
配当性向(利益還元の姿勢)
事例:投資先選定に成功した個人投資家ある個人投資家は複数企業を比較検討。財務分析の結果、同じ業界でも「ROEが高く」「営業キャッシュフローが安定」している企業を選び、長期投資で安定的なリターンを得ることに成功しました。
💡数字に基づいた投資判断は、感覚的な投資よりもリスクを抑えることができます。
M&A(企業買収・事業承継)での活用
M&Aの際、財務分析は買収価格やシナジー効果を見積もるために欠かせません。
事例:後継者不足の企業買収ある中小企業が事業承継で買収対象となった際、買い手企業は財務分析を実施。安全性・収益性は平均的でしたが、効率性(在庫回転率)が低く改善余地があることが判明。買収後に改善策を打ち出し、利益率の大幅アップにつながりました。
💡M&Aにおいては「リスクの見える化」と「改善余地の発見」が財務分析の役割です。
社内経営管理(KPI管理)での活用
経営者だけでなく、管理職や現場でも財務分析をKPI(重要業績評価指標)として活用できます。
例:営業部門での活用営業利益率や売上高成長率を部門別に算出することで、「どの部門が会社全体の収益に貢献しているか」を把握できる。
例:生産部門での活用労働生産性を分析し、設備投資や人員配置の最適化につなげる。
💡財務分析を単なる決算作業に留めず、日常の経営管理に組み込むことで、経営の精度が上がります。

財務分析に役立つツール・サービス
会計ソフト(財務データを整理する基盤)
会計ソフトは、日々の仕訳から自動で財務諸表を作成し、分析の基礎となるデータを整えます。
代表的なサービス
弥生会計:中小企業向けの定番。決算書・財務諸表をワンクリックで作成。
freee会計:クラウド型。銀行口座・クレカと連携し自動仕訳、初心者でも操作しやすい。
マネーフォワードクラウド会計:経営ダッシュボード機能が強力。経営者がリアルタイムで財務状況を把握可能。
👉 メリット:面倒な経理作業を効率化し、財務分析に必要な数値が揃う。
👉 おすすめ利用者:中小企業経営者、個人事業主。
財務分析専用クラウドツール(可視化・レポート作成)
財務指標を自動計算し、グラフやチャートでわかりやすく表示するツール。
代表的なサービス
BizForecast:複数年度の財務データを一元管理し、経営計画と連動。
PCA会計DX:管理会計機能が充実。部門別・プロジェクト別に収益性を分析可能。
Moneytree Work:キャッシュフローの可視化に強く、資金繰り管理と財務分析を同時に実現。
👉 メリット:数値だけでなく、グラフ化されたレポートを経営会議で活用できる。
👉 おすすめ利用者:部門別管理をしたい中堅企業、経営企画部。
BIツール(大規模データ分析・意思決定支援)
BI(Business Intelligence)ツールは財務だけでなく販売・人事・生産データを統合し、全社的な分析を可能にします。
代表的なサービス
Tableau:直感的なデータ可視化が可能。財務データをグラフやダッシュボード化。
Power BI(Microsoft):Excelとの連携が強力。コストを抑えて導入可能。
Qlik Sense:部門別データを自由に組み合わせ、多角的な分析が可能。
👉 メリット:財務分析を経営指標(売上・在庫・人件費)と結びつけ、意思決定に活かせる。
👉 おすすめ利用者:複数事業を展開する企業、経営企画部・CFO。
コンサルティング・専門家サービス(人の知見を活用)
システムだけでは読み解けない部分を補うのが専門家。財務指標を分析するだけでなく「どう改善するか」を一緒に考えてくれます。
活用できる専門家
税理士・会計士:決算書からの財務分析、税務面を考慮した改善提案。
中小企業診断士:財務だけでなく経営全般の課題分析。補助金申請サポートにも強い。
財務コンサルティング会社:資金繰り改善やM&A支援に特化した分析・提案。
👉 メリット:自社では気づけない改善策を得られる。金融機関や投資家に提出するレポート作成もサポート可能。
👉 おすすめ利用者:財務改善に本気で取り組みたい企業、融資やM&Aを控えている経営者。
ハイブリッド型(ツール+専門家)
最近では「クラウド会計ソフト+税理士サポート」のように、ツールと人の知見を組み合わせたサービスも増えています。
例:
freeeの「認定アドバイザー税理士」と連携
マネーフォワード × 会計事務所プラン
財務コンサル × BIツール導入支援
👉 メリット:ツールの利便性+専門家の実務アドバイスが同時に得られる。
👉 おすすめ利用者:ツールは導入したいが、分析や戦略立案は専門家に任せたい企業。

財務分析に関するよくある質問
Q1:財務分析は誰でもできますか?
A:基本的な指標であれば、会計知識がなくても可能です。会計ソフトを使えば自動算出もできます。
Q2:中小企業でも必要ですか?
A:必要です。小規模企業ほど資金繰りリスクが高いため、財務分析で早期発見することが重要です。
Q3:自己資本比率は何%あれば安全ですか?
A:一般的には40%以上が望ましいとされます。ただし業種によって適正水準は異なります。
Q4:ROEが高ければ良い会社ですか?
A:必ずしもそうではありません。過度な借入でROEが高まっている場合は注意が必要です。
Q5:キャッシュフロー分析との違いは?
A:キャッシュフロー分析は「現金の流れ」に特化したもの。財務分析の一部に位置づけられます。
まとめ|財務分析とは「企業の健康診断」
財務分析とは、企業の現状と将来を見極めるための必須の手段です。5つの種類(収益性・安全性・効率性・成長性・生産性)を理解し、数値の裏にある経営実態を読み取ることが大切です。
財務分析は単なる数字の確認ではなく、「課題発見 → 改善 → 成長戦略」につなげる経営の羅針盤です。
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