資金繰りとは?中小企業経営に欠かせない「お金の流れ」の管理方法をわかりやすく解説
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- 6月24日
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更新日:6月30日

目次
01.資金繰りとは
資金繰りとは?中小企業経営に欠かせない「お金の流れ」の管理方法をわかりやすく解説

資金繰りとは
資金繰りとは?簡単に言うと「会社のお金の出入りを管理すること」
「資金繰り(しきんぐり)」とは、企業や個人事業主が毎月の支払いや経費に対応できるよう、お金の出入りを計画・管理することを指します。売上はあっても手元の現金がなければ、仕入れや給料の支払いができません。そこで重要なのが、「いつ」「いくら」必要なお金が動くかを把握し、足りないときには事前に対応することです。
資金繰りとキャッシュフローの違い
資金繰り:目先の現金の動きを管理。短期的なお金のやりくり。
キャッシュフロー:一定期間の資金の流れを分析。長期的な視点。
資金繰りは「今月の支払いに足りるか?」という視点、キャッシュフローは「半年後、資金は健全か?」という視点です。
資金繰りが悪化するとどうなる?
資金繰りがうまくいかないと、ただの「一時的な現金不足」では済まされません。企業活動そのものに支障をきたし、最悪の場合は倒産へと直結する可能性があります。
1. 仕入先や外注先への支払いが遅れる・止まる
資金繰りが悪化すると、まず最初に影響が出るのが仕入れや外注への支払いです。
商品や材料の仕入れができなくなる
外注スタッフや協力会社への支払いが滞る
継続的な発注がストップし、業務が回らなくなる
支払いの遅れはすぐに信用問題につながり、取引先からの信頼を失って契約打ち切りになる可能性もあります。
2. 従業員への給与・家賃・税金など「固定費」が払えない
次に問題となるのが、毎月必ず発生する固定費です。
給与の遅配(社員の離職につながる)
事務所や工場の家賃が滞納
税金・社会保険料が支払えずペナルティ発生
従業員は生活があるため、給与遅配は極めて深刻な問題です。一度でも起これば、離職やモチベーション低下、SNSや口コミでの悪評など、大きなリスクになります。
3. 銀行・取引先からの信用を失う → 資金調達が困難に
資金繰りが悪化し、支払いや納税に遅れが出ると、金融機関や取引先にその情報が伝わります。
銀行融資の審査に落ちる
借入の条件が悪化(保証人・担保の追加)
リスケジュール(返済猶予)の打診にも応じてもらえない
新規取引や発注を断られる
一度信用を失うと、資金調達が非常に困難になり、さらに資金繰りが悪化するという悪循環に陥ります。
4. 黒字倒産の危機:利益が出ていても会社は潰れる
「黒字倒産」とは、帳簿上では利益が出ているにもかかわらず、実際の現金(キャッシュ)が不足して倒産に追い込まれるケースを指します。
黒字倒産が起こる原因
売掛金の回収が遅れて現金がない
大型案件の支払いが先延ばしになっている
在庫や投資にお金を使いすぎている
例:月末に300万円の売上が確定していても、実際の入金が2ヶ月後で、今月末に支払う400万円の仕入れや給料に間に合わない…→ 結果的に「現金不足」で倒産、という事態に。

資金繰りを改善する具体的な方法5選
1. 売上債権の回収を早める(売掛金の早期回収)
中小企業では「売ったけど、まだお金を受け取っていない」という売掛金が資金繰りの圧迫要因になりがちです。以下の方法で回収を早めましょう。
💡改善ポイント
取引先と支払いサイトの短縮交渉(例:月末締め・翌月末払い→翌月15日払い)
請求書の早期発行と未収金の督促徹底
ファクタリングの活用で売掛金を即現金化
ファクタリングは、売掛金を売却して早期に資金を得る方法です。借入とは異なり、負債に計上されないため決算対策にも有効です。
2. 支払サイトを見直す(支払いの延期交渉)
支出のタイミングを後ろ倒しにすることで、一時的に資金繰りを楽にできます。仕入先や外注先との関係性を考慮しつつ、支払い条件の見直しを検討しましょう。
💡改善ポイント
支払いサイトの延長交渉(例:30日→45日)
月末支払い→翌月10日払いへの変更依頼
定額支払いの分割・一時据え置き相談(例:家賃、外注費など)
ただし、相手との信頼関係を崩さないよう注意が必要です。誠実な交渉を心がけましょう。
3. 不要な在庫を減らす(棚卸資産の圧縮)
在庫は「売れるまで現金にならない資産」であり、資金が寝ている状態です。売れ残りや過剰在庫は、資金繰りの悪化要因となります。
💡改善ポイント
回転率の悪い在庫の処分・値引き販売
発注ロット・納期の見直しで在庫の適正化
ITツールを活用した在庫管理(販売予測、発注管理
在庫を減らすことで、保管コスト・損耗リスクも削減でき、キャッシュが回りやすくなります。
4. 資金調達を行う(融資・ファクタリング・ABLなど)
手元資金が不足しているときは、早めに資金調達を検討しましょう。
💡主な資金調達方法
銀行融資(制度融資、日本政策金融公庫など)
ビジネスローン(小口・短期)
注意点として、融資審査には決算書の内容や税金の滞納状況などが見られるため、日頃の帳簿管理も重要です。
5. 補助金や助成金を活用する(返済不要の支援策)
国・自治体からの返済不要の支援金は、使えるものがあれば積極的に活用しましょう。
💡よく使われる制度
小規模事業者持続化補助金
IT導入補助金
雇用調整助成金
都道府県ごとの独自制度
これらは時期や要件があるため、定期的に情報収集を行うか、専門家(税理士・社労士)に相談するのがおすすめです。

資金繰りが苦しいときの具体的な対処法
1. 金融機関に早めに相談する(地元の銀行・信用金庫など)
まず第一に行うべきは、メインバンクへの相談です。資金が不足する前に打ち明ければ、対応してもらえる可能性が高くなります。
💡相談時のポイント
資金繰り表や今後の見通しを用意する
「資金がショートしそうな理由」と「必要な金額」を明確に伝える
借入のリスケジュール(返済猶予)や追加融資の相談も可能
⚠️注意点
事後報告ではなく事前相談が信頼関係の維持に直結します
融資が間に合わない場合に備え、他の選択肢と並行して動くことも大切です
2. 日本政策金融公庫・制度融資を活用する
中小企業や個人事業主向けの公的融資制度は、比較的低金利・長期返済・無担保で利用できることが特徴です。
💡主な制度例
日本政策金融公庫の「新創業融資」や「資本性ローン」
自治体の制度融資(信用保証協会付き)
セーフティネット保証4号・5号(コロナ・物価高など)
💡申請時のコツ
事業計画書・試算表・資金繰り表を丁寧に作成する
税金や社会保険料の滞納がないかチェック(あれば正直に相談)
✅メリット
銀行よりも柔軟に対応してくれるケースが多い
信用力が低めの企業でも相談に応じてもらえる
3. ファクタリングを活用して売掛金を早期資金化する
売掛金(未回収の売上)を即現金化できるファクタリングは、急場の資金繰りに有効な手段です。
💡仕組み
売掛債権をファクタリング会社に売却
即日〜数日で現金化可能(入金を待たずに資金調達)
✅こんな場面に最適
銀行融資が間に合わない
信用情報に不安があるが、売掛先が信頼できる会社
⚠️注意点
手数料が3%〜20%程度かかる場合あり
相手先に通知がある「3社間ファクタリング」か、通知なしの「2社間ファクタリング」かで違いあり
ファクタリングは「借金ではなく売掛金の前倒し回収」であるため、財務上の負担を増やさずに資金確保が可能です。
4. 税金・社会保険料の「納付猶予制度」を使う
資金繰りが厳しいときに多いのが、「税金や社会保険料が払えない」ケースです。このようなときは、行政機関の納付猶予制度を活用しましょう。
✅代表的な制度
国税の「納税猶予」「換価の猶予」制度(最長1年)
地方税の「徴収猶予」制度
年金事務所による「社会保険料の納付猶予」申請
💡ポイント
申請前に必ず相談が必要
書類(資金繰り表、損益計算書など)提出を求められる
一定の要件を満たせば「延滞税が免除」される場合もあり
まとめ:資金繰りは経営の命綱。定期的な見直しと対策を!
資金繰りとは、企業経営における「血液」のようなもの。黒字でも、現金が足りなければ企業は倒れてしまいます。
毎月の資金繰りを見直し、必要に応じて金融機関・専門家の力を借りることが重要です。経営者自身が「お金の流れ」に敏感になり、計画的な資金管理を心がけましょう。
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