MBOとは?意味・目的・M&Aとの違いをわかりやすく解説【2025年最新版】
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- 7月23日
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目次
MBOとは?意味・目的・M&Aとの違いをわかりやすく解説【2025年最新版】

MBO(マネジメント・バイアウト)とは
MBO(Management Buyout:マネジメント・バイアウト)とは、企業の経営陣が自社の株式を取得して、会社の経営権を自らの手に移す手法です。外部の第三者ではなく、現経営陣が買収者となる点が特徴で、主に以下のような目的で活用されます。
オーナー経営者の引退に伴う事業承継
企業グループの事業再編・分社化
経営の独立性確保
中小企業やベンチャー企業においては、後継者不在の解決策として注目されており、外部に事業を売却せずに“現場を知る経営陣”がそのまま会社を引き継げる点が大きなメリットです。
MBOを実施する目的と背景
MBOが実施される背景には、経営体制の見直しや事業承継など、企業の重要な転換期が存在します。主な目的は以下の通りです。
後継者問題の解決
多くの中小企業が直面している「後継者不在」問題において、現経営陣が株式を取得することで、親族以外への承継を円滑に行うことが可能になります。
経営の独立性確保
親会社や大株主の意向に左右されず、経営判断をスピーディーかつ柔軟に行うために、MBOによって独立した経営体制を確立します。
スピンオフや事業再編の手段として
大手企業の一部門や子会社が独立する際のスキームとしてもMBOは有効です。経営陣が独立して事業を買い取ることで、機動力の高い運営が期待できます。
MBOとM&A(買収)との違いとは
MBO(マネジメント・バイアウト)とM&A(Mergers and Acquisitions/企業の合併・買収)は、いずれも企業の所有権が移転する手法ですが、買収主体と目的に大きな違いがあります。
MBOは、経営陣が自らの会社を買収する手法であり、外部に経営権を渡さずに会社の独立性を保ちながら事業承継や再編を行うことができます。一方で、M&Aは、外部の第三者(他企業や投資家など)による買収であり、シナジー効果やスケールメリットを目的に行われます。
以下の表で、両者の違いを整理してみましょう。
比較項目 | MBO(マネジメント・バイアウト) | M&A(第三者による買収) |
買収者 | 現経営陣 | 外部の企業や投資家 |
目的 | 経営の独立・事業承継 | 事業拡大・シナジー獲得 |
主な活用場面 | 後継者不在、企業の独立支援 | 業界再編、経営統合、成長戦略 |
社内体制の変化 | 小さい(現体制を維持しやすい) | 大きい(経営陣や方針が変わる可能性あり) |
リスク負担 | 経営陣が自らリスクを背負う | 売却企業側のリスクは少ない |
MBOは、社内の理解や協力を得やすく、顧客や従業員にとっても安心感を持たれる一方で、資金調達や経営責任の重さが経営陣に集中します。一方、M&Aは外部の力を活用して企業価値を高めるチャンスもありますが、文化や方針の不一致による摩擦が発生するリスクも否定できません。

MBOのメリットとデメリット
MBO(マネジメント・バイアウト)は、経営陣が自社を買収するという性質上、他の事業承継や買収手法と比べて特有のメリットとデメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう
MBOのメリット
経営の独立性を維持できる
MBOは、経営陣が株式を取得して経営権を掌握するため、外部資本や親会社の干渉を受けずに、自社のビジョンに沿った経営を継続できます。
現場を知る経営陣が引き継ぐことで安定性が高い
第三者によるM&Aと異なり、すでに事業に精通している経営陣が買収するため、引き継ぎによる混乱や方針転換のリスクが小さく、従業員や取引先にとっても安心感があります。
事業承継の選択肢として柔軟性がある
親族や社内に後継者がいない場合でも、現経営陣によるMBOで承継が可能になります。特に中小企業にとっては、有効な承継策のひとつです。
MBOのデメリット
多額の資金調達が必要になる
自社の株式を買い取るには多額の資金が必要です。特に未上場企業の場合は資金の流動性が低く、金融機関からの融資や投資ファンドとの連携が不可欠となります。
経営陣に経営リスクと財務リスクが集中する
経営と資金調達の両方を背負うことになるため、経営陣へのプレッシャーは大きくなります。業績が想定よりも悪化した場合、個人保証や返済リスクが現実化する可能性もあります。
社内外の利害関係者との調整が必要
株主、従業員、金融機関などの関係者と信頼関係を築き、納得を得るための丁寧な調整と情報開示が求められます。

MBOの具体的な流れとステップ
MBO(マネジメント・バイアウト)を成功させるには、事前準備から資金調達、契約締結、買収後の経営体制まで、綿密なステップを踏む必要があります。以下では、MBO実施の一般的な流れを段階ごとに解説します。
【STEP1】実施可能性の検討(フィージビリティ・スタディ)
まずは、MBOが自社にとって現実的な選択肢かどうかを検討します。経営陣の意志、会社の評価額、既存株主の意向、将来的な成長見込みなどを総合的に分析します。ここでは、外部のM&Aアドバイザーやファイナンシャルプランナーに相談するケースも一般的です。
【STEP2】買収スキームの設計
MBOの目的や資金調達手段に応じて、最適な買収スキームを設計します。以下のような選択肢を検討する必要があります。
株式譲渡方式 or 事業譲渡方式
LBO(レバレッジド・バイアウト)を活用するかどうか
新設会社(SPC)を設立して買収するか
【STEP3】資金調達
MBOでは、経営陣が自社の株式を買い取るため、多くの場合、外部からの資金調達が必要となります。以下のような調達手段があります。
銀行融資(担保付き or 無担保)
投資ファンド(プライベート・エクイティなど)
売掛債権ファクタリングなどの短期資金繰り手段
この段階で、資金調達のための事業計画書の策定が重要となります。
【STEP4】契約締結・株式譲渡
買収条件が整えば、株式譲渡契約を締結します。この際、売主と買主(経営陣)双方の合意を明確にし、第三者(金融機関・アドバイザー)の承認を得る場合もあります。法務・税務面のチェックも並行して行われます。
【STEP5】経営体制の再構築と運営
株式譲渡後は、経営陣がオーナー経営者として会社を運営していくことになります。新体制に移行するにあたり、従業員・取引先への説明や社内体制の再編などを行い、スムーズな事業継続を図ります。

MBOの資金調達手段と注意点
MBO(マネジメント・バイアウト)を実行する際には、経営陣が自社の株式を取得するために多額の資金が必要になります。自己資金だけでまかなえるケースは稀であり、多くの場合、外部からの資金調達を組み合わせて実施されます。
ここでは、代表的な資金調達手段と、それぞれのメリット・注意点を解説します。
銀行融資(金融機関からの借入)
もっとも一般的な方法が、銀行からの融資を受けて株式を買い取る手法です。経営陣個人が借入を行う場合と、新設会社(SPC:特別目的会社)を通じて借入する場合があります。
メリット
金利が比較的低く、返済期間も柔軟
株式譲渡後も経営陣の経営自由度が高い
注意点
保証や担保を求められることが多く、個人保証が必要なケースも
業績が悪化した場合、返済リスクが経営陣に集中
投資ファンド(プライベート・エクイティなど)
外部の投資ファンドと組んで、MBOを実施するケースもあります。特に事業再生や成長見込みのある企業では、ファンド側も積極的に参入します。
メリット
自己資金が少なくてもMBOを実施できる
経営支援や再成長へのアドバイスが受けられる
注意点
経営への関与や株式の売却条件など、一定の制約がある
将来的に再売却(Exit)を求められる可能性がある
LBO(レバレッジド・バイアウト)
LBOは、買収対象企業の将来キャッシュフローや資産を担保にして資金を借り入れるスキームです。MBOと併用されることが多く、資金調達の効率化が図れます。
メリット
自己資金の割合を抑えられる
企業価値を活かした資金調達が可能
注意点
キャッシュフローの安定性が求められる
過度な借入は経営リスクを高める
ファクタリング(売掛債権の資金化)
MBOの一部資金や運転資金として、売掛債権を資金化する「ファクタリング」の活用も選択肢の一つです。スピーディーな資金調達が可能で、担保や保証人が不要なケースもあります。
メリット
審査が早く、即日の資金調達も可能
財務諸表に借入金として計上されない(オフバランス)
注意点
手数料が発生する
売掛先の信用状況に影響を受ける
資金調達時の注意点まとめ
MBOの資金調達は、経営の今後を左右する極めて重要なプロセスです。過剰なレバレッジ(借入)に依存しすぎると、事業リスクが高まり失敗の原因となりかねません。複数の資金調達手段を組み合わせ、財務バランスを維持しながら、無理のない返済計画を立てることが成功の鍵となります。

MBOの成功事例と失敗要因
MBO(マネジメント・バイアウト)は、適切に設計・実行されれば、経営の安定と成長を実現する強力な手段です。一方で、準備不足や資金計画の甘さが原因で失敗に至るケースもあります。ここでは、実際のMBOに基づく成功事例と失敗要因について解説します。
MBOの成功事例
事例1:製造業の後継者不在問題をMBOで解決
ある地方の金属加工メーカーでは、創業者の高齢化により後継者問題が発生。従業員として長年勤めてきた専務がMBOを提案し、地元銀行と投資ファンドからの支援を受けて株式を取得。経営体制はそのまま維持され、安定した事業承継が実現した。
成功ポイント
現場を熟知した経営陣による承継
金融機関・ファンドとの良好な連携
従業員や取引先からの信頼確保
事例2:ITベンチャーがグループから独立
大手企業の子会社として事業展開していたIT企業が、意思決定のスピード向上と独立志向の強化を目的に、経営陣によるMBOを実施。外部ファンドの出資を得て株式を取得し、以後はスタートアップとして資金調達や成長戦略を独自に展開。IPOにも成功した。
成功ポイント
明確な成長ビジョンとリーダーシップ
資金計画と将来収益の説得力
組織内外からの支援体制
MBOの失敗要因
資金調達に無理があった
MBOの資金調達に過度な借入を依存した結果、資金繰りが悪化。売上が伸びず返済が困難になり、最終的には事業の縮小や売却に至ったケースもあります。
経営陣の覚悟と計画が不十分
MBO後に経営環境が急変した際、想定外の課題に対応できず、現場が混乱。MBO実行前の事業計画が甘く、資金・人材・マーケティング面での準備不足が目立ちました。
ステークホルダーとの調整不足
従業員や主要取引先への説明が不十分だったことで、MBOに対する不信感が広がり、離職や契約解除などが相次いだ例もあります。
MBOを成功に導くには、事前のシナリオ設計、資金調達の健全性、関係者との信頼関係の構築が欠かせません。逆にこれらの要素が欠けると、MBOは大きなリスクとなる可能性があります。

MBOに関するよくある質問
【Q1】MBOは中小企業でも実施できますか?
A. はい、可能です。むしろ後継者不在の中小企業にとって、MBOは現場を知る経営陣による円滑な事業承継手段として有効です。ただし、株式の評価額や資金調達のスキーム設計に注意が必要です。
【Q2】MBOとLBOの違いは何ですか?
A. MBOは「経営陣が自社を買収する手法」であり、LBOは「将来のキャッシュフローや資産を担保にして資金を借入れ、買収資金に充てるスキーム」です。MBOの実行においてLBOはよく併用されます。
【Q3】MBOにはどのくらいの費用がかかりますか?
A. 自社の企業価値や買収スキームによって異なりますが、株式の買取価格に加えて、アドバイザー費用・デューデリジェンス費用・契約書作成費用などを含めると、数百万円〜数千万円以上かかるケースもあります。
【Q4】MBO実施時に従業員への説明は必要ですか?
A. はい。MBOは経営体制の変更を伴うため、従業員への丁寧な説明と信頼関係の維持が不可欠です。不安を与えず、今後の展望や組織体制について明確に伝えることが成功の鍵となります。
【Q5】MBOを成功させるために最も重要なことは何ですか?
A. 最も重要なのは、「資金計画の現実性」と「経営陣の覚悟と信頼性」です。また、専門家のサポートを受けながら、ステークホルダーとの調整を丁寧に行うことが成功への近道です。
まとめ|MBOは経営陣の意思で未来をつなぐ手段
MBO(マネジメント・バイアウト)は、単なる株式の取得ではなく、経営陣が自らの意思と責任で企業の未来を引き継ぐ意思決定です。
外部に経営権を譲渡せず、自社のビジョンをそのまま継承したい場合や、親族に後継者がいない中小企業にとって、MBOは極めて有効な選択肢となります。また、スタートアップやベンチャー企業がグループ企業から独立する手段としても注目されています。
ただし、MBOの実行には以下のような慎重な準備と戦略が不可欠です。
企業価値評価と適切なスキーム設計
適正な資金調達手段と返済計画
ステークホルダー(株主・従業員・金融機関等)との信頼関係構築
経営者としての強い覚悟と継続的なリーダーシップ
MBOは「経営の自由」を得る一方で、「全責任を背負う選択」でもあります。だからこそ、成功すれば高い満足度と企業成長の実現につながります。
自社の未来を自らの手で切り開きたいと考えている経営者の方にとって、MBOはその第一歩となるかもしれません。
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