税務会計とは?他の会計との違いや業務内容を解説
- FA
- 7月26日
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目次
税務会計とは?他の会計との違いや業務内容を解説

税務会計とは?わかりやすく解説
税務会計とは、企業が納める税金の金額を計算し、正しく申告するための会計処理のことを指します。たとえば、法人税や消費税、事業所税など、会社が国や地方自治体に支払う税金は、売上や利益をもとに計算されます。この計算を行うためには、帳簿や決算書といった会計資料が必要となり、税法のルールに従って処理を行うのが「税務会計」です。
会計の目的によって分かれる3つの会計のひとつ
企業の会計には大きく分けて以下の3種類があります。
会計の種類 | 主な目的 | 主な利用者 |
財務会計 | 経営成績や財政状況を社外に報告する | 投資家・銀行など |
管理会計 | 経営判断に必要な情報を社内で使う | 経営者・管理職など |
税務会計 | 税金の計算・申告を正しく行うための処理 | 税務署などの行政機関 |
税務会計は、上記のうち「税務署に提出するための情報整理」を目的とした会計です。つまり、**税務会計=“税金のための会計”**と覚えておくとわかりやすいでしょう。
税法に基づいて処理するのが特徴
通常の会計処理は「会計基準」と呼ばれるルールに従って行われますが、税務会計では「税法」によるルールが適用されます。たとえば、減価償却(設備や機械の価値を数年に分けて費用計上する処理)ひとつをとっても、会計上の処理と税法上の処理で金額やタイミングが異なることがあります。
このような違いに対応しながら、適正な税額を計算し、期限内に申告・納付することが税務会計の目的です。
税務会計と他の会計(財務会計・管理会計)との違い
会計には大きく分けて「税務会計」「財務会計」「管理会計」の3種類があります。どれも「お金の流れ」を扱いますが、それぞれ目的や使われ方が異なります。
ここでは、税務会計がどのように他の会計と違うのか、わかりやすく比較していきましょう。
税務会計と財務会計の違い
税務会計は「税金を計算するための会計」、一方で**財務会計は「会社の成績を対外的に報告するための会計」**です。
目的の違い
税務会計:税金の申告・納付のために、税法に基づいて利益や損失を計算する
財務会計:投資家・金融機関・株主などに向けて、会社の経営成績を開示する
ルールの違い
税務会計:税法(法人税法など)に基づく
財務会計:会計基準(企業会計原則や会計基準書など)に基づく
処理の例:減価償却の違い
たとえば、10万円のパソコンを購入して「3年で費用化」する場合:
項目 | 税務会計 | 財務会計 |
減価償却費の計上方法 | 法定耐用年数(税法)に従って処理 | 実態に即した年数で処理可 |
税務会計は、あくまで税法が定めたルールで行う必要があるため、自由度が低い反面、明確です。
税務会計と管理会計の違い
管理会計は「経営判断のために使う会計」で、社内向けの情報管理が目的です。これに対して、税務会計は「社外(=税務署)」に提出するための書類作成が目的です。
目的の違い
税務会計:税務署に提出するための正しい税金計算
管理会計:社内の経営判断や戦略立案のための情報収集・分析
利用者の違い
税務会計:税務署・会計事務所・経理担当者
管理会計:経営者・マネージャー・事業責任者など
柔軟性の違い
税務会計は「法律に従う」ためルールが厳格
管理会計は「会社の方針に合わせて自由に設計」できる
💡ポイントまとめ
比較項目 | 税務会計 | 財務会計 | 管理会計 |
主な目的 | 税金の計算 | 外部への情報開示 | 経営判断の材料 |
対象者 | 税務署など | 株主・投資家 | 経営者・幹部 |
基準 | 税法 | 会計基準 | 会社独自でOK |
柔軟性 | 低い(厳格) | 中程度 | 高い(自由) |
税務会計の主な業務内容
税務会計の目的は、会社が支払うべき税金を正しく計算し、期限内に申告・納付することです。では、実際に税務会計ではどのような業務を行うのでしょうか?ここでは、代表的な業務内容を初心者にもわかりやすく解説します。
法人税・消費税などの申告書作成
税務会計でもっとも基本的な業務は、法人税や消費税などの申告書を作成することです。会社が1年間でどれだけ利益を出し、いくらの税金を納める必要があるのかを、帳簿や決算書から算出します。
たとえば法人税の申告では、会計上の利益(=「税引前当期純利益」)をもとに、税法上のルールに従って調整を行い、課税所得を確定させる必要があります。
税務調査への対応
税務会計では、税務調査への準備や対応も重要な業務のひとつです。税務調査とは、税務署が「この会社は適正に申告しているか?」をチェックする制度で、数年に一度行われることがあります。
調査では、帳簿や領収書、契約書などを確認されるため、日頃から正確な帳簿管理と適切な会計処理が求められます。
税効果会計の処理(※必要に応じて)
上場企業や一部の中小企業では、「税効果会計」と呼ばれる特殊な処理が必要になります。これは、会計上と税務上でタイミングがズレる費用・収益を調整し、企業の財務状況を正確に見せるための手法です。
初心者には少し難しい内容ですが、簡単に言えば、**「会計と税務のズレを帳尻合わせする処理」**と考えてください。なお、必ずしもすべての企業に必要なものではありません。
節税対策や税務リスクの管理
税務会計の役割は申告業務だけではありません。過剰な納税やペナルティを回避するための「税務リスク管理」や、合法的な節税対策も重要な業務です。
たとえば、交際費の一部を経費として計上できるかどうか、消費税の課税・非課税取引の判定など、専門的な判断が求められるケースも多くあります。
税理士や専門家と連携しながら、税務面のリスクを最小限に抑えるのが税務会計のプロの役割です。
✅税務会計の業務は「数字」と「法律」の両方を扱う
税務会計の実務は、ただの計算作業ではありません。「どの取引をどう処理するか?」を税法に照らして判断し、正確に記録・申告することが求められます。
そのため、法律知識と実務経験の両方が重要となり、税理士や会計事務所が専門的に対応するケースが多いのです。

税務会計が必要な理由と重要性
税務会計は、すべての法人や事業者にとって欠かせない業務です。「なぜそこまで重要なのか?」ここでは、税務会計が企業経営において果たす役割と、その必要性を初心者向けにわかりやすく解説します。
税金の正しい計算と納付のために必要
最も大きな理由は、税金を正しく計算し、期限内に納めるためです。法人であれば、毎年決算後に法人税・消費税・事業税などを申告・納付しなければなりません。
税務会計では、会計上の数字を税法に合わせて調整し、正しい「課税所得」や「納税額」を導き出す必要があります。申告ミスがあると、追徴課税や延滞税、罰金などのペナルティが課されることもあるため、極めて重要です。
税務調査リスクを避けるため
企業は一定の周期で税務署による税務調査を受ける可能性があります。このとき、帳簿や領収書、会計処理に不備があると、過去にさかのぼって修正申告を求められたり、重加算税を課されたりすることも。
日頃から税務会計を正しく行い、証拠資料を整えておくことで、調査にも自信を持って対応できるようになります。
節税対策のベースになる
合法的に納税額を抑える「節税」は、多くの経営者が関心を持つポイントです。しかし、節税を適切に行うためには、まず税務会計がしっかりできていることが前提となります。
たとえば、
交際費の取り扱い
減価償却の方法
欠損金の繰越控除など、さまざまな判断において、税法に沿った記帳と処理が必要です。
適切な税務会計が、将来的な節税につながる土台になるのです。
経営の健全性を保つためにも不可欠
税務会計がずさんだと、思わぬ税負担が後から発生することがあります。たとえば、「黒字と思っていたのに、税金を納めるお金が残っていなかった…」というケースも少なくありません。
こうしたトラブルを防ぐためにも、定期的な税務会計の見直しや記帳の精度向上は重要です。
✅税務会計は企業の“納税責任”を果たすための要
税務会計は単なる「会計業務」ではなく、企業が社会的責任として果たすべき納税義務の根幹を担うものです。
正確な税務処理ができれば、税務リスクを避け、資金繰りの安定や節税対策にもつながります。会社を長く続けていくためにも、税務会計の重要性をしっかり理解し、適切に対応することが欠かせません。
税務会計を行う専門家とは?【税理士との関係】
税務会計を正確に行うためには、専門知識と法律の理解が求められます。特に法人税や消費税などの申告業務は、税法の解釈や処理の仕方が複雑なため、多くの企業では税理士に依頼しています。
このセクションでは、税務会計を担う専門家「税理士」について、その役割と関わり方を紹介します。
税務会計のプロフェッショナル「税理士」
税理士とは、税金に関する手続きを代行・代理できる国家資格保有者です。以下のような業務を独占的に行うことが認められています。
税理士ができる主な業務
法人税・所得税・消費税などの申告書作成
税務調査の立ち会い・代理対応
税務署との折衝や回答
節税に関するアドバイス
つまり、「税務のプロフェッショナル」=税理士といっても過言ではありません。
会計士や経理担当者との違いは?
税理士とよく混同されやすいのが「公認会計士」や「経理担当者」です。それぞれの役割の違いを下記にまとめました。
役割 | 主な業務内容 | 税務申告の代理 |
税理士 | 税務申告・税務調査・節税相談など | ◯(可能) |
公認会計士 | 財務諸表の監査や証明業務 | ×(原則不可) |
経理担当者 | 社内の記帳や経費精算、仕訳処理 | ×(申告はできない) |
税金の計算だけでなく、「誰がその業務を行うのか」によって対応範囲が変わる点に注意が必要です。
中小企業や個人事業主も税理士に相談すべき?
「うちは小規模だから税理士は必要ないのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、むしろ小規模な事業者こそ税理士のサポートが有効です。
なぜなら…
節税の知識がないと、損をする可能性がある
税務調査に自分で対応するのは大きな負担
会計処理のミスで追徴課税が発生する恐れがある
税理士に依頼することで、税務の不安を取り除き、事業に集中できる環境が整います。
✅ポイント
税務会計は高度な専門知識が必要な分野
税理士は税金に関する申告や調査対応の専門家
規模の大小にかかわらず、税理士への相談は大きなメリットがある

税務会計に関するよくある質問
税務会計について調べていると、「これってどういう意味?」「自分のケースでも必要なの?」といった疑問が出てくる方も多いでしょう。ここでは、初心者の方が特に気になりやすい質問をピックアップし、わかりやすくお答えします。
Q1. 税務会計と財務会計、どちらが重要なんですか?
A. どちらも重要ですが、目的が異なります。
税務会計は、税金を正しく申告・納付するために必要な会計
財務会計は、投資家や金融機関など外部の人に会社の経営状態を説明するための会計
つまり、税金対策には税務会計、外部との信頼構築には財務会計が不可欠です。どちらか一方では不十分なので、両方をバランスよく行う必要があります。
Q2. 個人事業主でも税務会計は必要ですか?
A. はい、個人事業主にも税務会計は必要です。
たとえ会社を設立していなくても、事業所得がある人は確定申告が必要になります。青色申告など、節税効果のある制度を使うには、帳簿の作成や収支管理が欠かせません。
そのため、個人事業主であっても、税務会計の知識や体制は整えておくべきといえるでしょう。
Q3. 税務会計ソフトがあれば税理士は不要ですか?
A. ソフトは便利ですが、税理士の役割を完全に代替するものではありません。
最近では「freee」や「マネーフォワード」などのクラウド会計ソフトが普及しており、入力の手間が軽減されています。しかし、税法の細かな判断や節税アドバイス、税務調査への対応など、人の判断や交渉が求められる場面では税理士が必要不可欠です。
ソフトと税理士の**「いいとこ取り」で併用するのがおすすめ**です。
Q4. 税務会計を怠るとどうなりますか?
A. 申告漏れや納税遅延によって、追徴課税やペナルティを受ける可能性があります。
税務会計を怠ると、以下のようなリスクがあります:
延滞税(納税の遅れによる利息のような税金)
加算税(申告ミスや隠ぺいに対するペナルティ)
税務調査での指摘・修正申告
最悪の場合、会社の信用にも大きな傷がつきます。正確な帳簿づけと期限内の申告を常に意識することが大切です。
まとめ|税務会計は企業の税金管理に欠かせない仕組み
税務会計は、企業や個人事業主が納税義務を果たすために不可欠な会計処理です。会計というと「会社の経営成績を見るもの」と思われがちですが、税務会計はその中でも税金に特化した専門分野であり、企業活動を続けていく上で必ず関わるものです。
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