エクイティファイナンスとは?デットファイナンスとの違いと資金調達の選び方をやさしく解説【初心者向け】
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- 8月7日
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目次
エクイティファイナンスとは?デットファイナンスとの違いと資金調達の選び方をやさしく解説【初心者向け】

エクイティファイナンスとデットファイナンスとは?
デットファイナンスとは?
デットファイナンスとは、企業が金融機関や債券市場などから「借金」という形で資金を調達する方法です。たとえば、銀行からの融資や社債の発行が該当します。
特徴は以下の通りです:
元本の返済が必要
利息が発生する(=コストがかかる)
一定期間で返済する契約がある
お金を貸す側(債権者)は会社の経営に直接関与しない
💡補足:「デット(Debt)」=英語で「借金」「負債」のことを指します。
エクイティファイナンスとは?
エクイティファイナンスは、株式を新たに発行して投資家に買ってもらうことで資金を調達する方法です。資金を提供する人(投資家)はその見返りとして「株主」になり、企業の一部のオーナーになります。
特徴は以下の通りです:
原則として返済の必要がない
配当がある場合もあるが、義務ではない
株主として経営に関わる権利(議決権など)が発生
株式発行により、既存の経営者の持ち株比率が下がる(=経営権の希薄化)
💡 補足:「エクイティ(Equity)」とは?企業の“自己資本”のことで、返済義務がない資金のことです。投資家からの出資=エクイティです。

それぞれのメリットをかんたん比較
エクイティファイナンスとデットファイナンスは、どちらも資金を調達する手段ですが、それぞれに異なる強みがあります。ここでは、それぞれのメリットを初心者にもわかりやすく整理してみましょう。
デットファイナンスのメリット
① 経営権が守られる
デットファイナンスでは、資金を貸す金融機関や債権者が企業の経営に関与することは基本的にありません。そのため、経営権を維持したまま資金を得たい企業にとっては安心な手段です。
② 利息は経費にできる(節税効果)
借入にかかる利息は「支払利息」として会計上の経費に計上できるため、法人税の節税に繋がるメリットがあります。
例:1,000万円を借りて年間30万円の利息を支払う場合、この30万円は経費として扱われ、課税所得を減らすことができます。
③ 短期間での資金調達が可能
デットファイナンスは、信用力がある企業であれば、比較的短期間でまとまった資金を得られる可能性が高いです。金融機関との取引実績がある企業ほど有利になります。
エクイティファイナンスのメリット
① 返済が不要だから資金繰りに余裕ができる
最大のメリットは「返済しなくてよい資金」であること。企業にとっては資金繰りの負担を軽減できるので、将来の成長に向けた投資に集中しやすくなります。
② 自己資本比率が高まり信用力が上がる
出資を受けることで「自己資本」が増え、財務体質が改善します。この結果、金融機関や取引先からの信用も高まりやすくなります。
💡補足:「自己資本比率」とは?総資産に占める自己資本の割合のこと。高いほど“財務が健全”とみなされます。
③ 投資家の支援やネットワークが得られる
エクイティファイナンスでは、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家など、経営ノウハウや人脈を持つ投資家がパートナーになる可能性があります。
こんな効果も:
経営アドバイス
人材紹介
新たな取引先の紹介など、単なる「お金」以上の価値が得られることもあります。
注意したい“デメリットとリスク”
エクイティファイナンスとデットファイナンスにはそれぞれ魅力的なメリットがありますが、一方で注意すべきポイントやリスクも存在します。ここでは、導入前に必ず押さえておきたい“落とし穴”をわかりやすく解説します。
デットファイナンスのデメリットと注意点
① 返済義務がある=資金繰りを圧迫するリスク
借入には必ず返済義務があり、さらに利息も発生します。業績が悪化した場合でも、返済スケジュールは基本的に変わらずにやってくるため、資金繰りの悪化につながる恐れがあります。
💡補足:売上が落ちても借金は待ってくれない、という点に注意が必要です。
② 財務体質が悪化する可能性がある
借入は「負債」としてバランスシート(貸借対照表)に記載されます。そのため、自己資本比率が下がり、企業の信用力が低下することもあります。
とくに過剰な借入は、「資金が足りていない会社」「倒産リスクが高い」と見なされるリスクを伴います。
③ 担保や保証が必要なケースが多い
金融機関の融資では、不動産や売掛金などの担保や、代表者の個人保証が求められることも少なくありません。万が一返済できなかった場合、経営者個人の資産にまで影響が及ぶ可能性があるため注意が必要です。
エクイティファイナンスのデメリットと注意点
① 経営権の一部を手放すことになる
株式を発行するということは、会社の“所有権”を一部投資家に渡すことを意味します。出資者(=株主)には議決権があるため、経営判断に対して意見を述べる権利があります。
結果として:
自由な経営判断がしづらくなる
経営方針の対立が起きる可能性があるといったリスクも考えられます。
② 将来的に配当のプレッシャーが生まれる
エクイティファイナンスでは返済義務こそありませんが、株主は配当や株価上昇による利益を期待して出資します。利益が出ていれば「配当を出してほしい」という声が上がることもあり、資金の使い道に制限がかかるケースも。
③ 調達までに時間と手続きがかかる
株式を発行するには、社内の決議や登記、契約書の作成、投資家との交渉など多くの手続きが必要です。そのため、すぐに資金が必要な場合には不向きで、準備期間も見込む必要があります。
実際の活用シーン別の選び方
エクイティファイナンスとデットファイナンス、どちらを選ぶべきかは、企業の「成長段階」や「経営戦略」によって異なります。ここでは、よくある2つのタイプの企業を例に、それぞれに適した資金調達方法を紹介します。
スタートアップや成長途中の企業には?(エクイティ向き)
急成長を目指すスタートアップや、今まさに事業拡大中の企業にとっては、エクイティファイナンスの活用が効果的です。
その理由:
売上がまだ安定していない状態では、借金の返済リスクが大きい
投資家からの資金で、人材採用やマーケティングなどの先行投資が可能
VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家からの経営サポート・ノウハウ提供も期待できる
たとえば:新しいITサービスを立ち上げる企業で、黒字化には1〜2年かかる見込み。→ エクイティファイナンスで資金調達し、返済に追われずに開発に集中できます。
安定した収益がある中堅企業には?(デット向き)
すでに売上や利益が安定しており、「資金は必要だが、経営権は守りたい」という企業には、デットファイナンスが向いています。
その理由:
融資を受けても、利益から無理なく返済できる体制がある
株式の発行によって、経営権が分散するのを避けられる
利息を損金として計上できるため、節税効果もある
たとえば:製造業で長年黒字を維持している企業が、新工場を建てるために資金を調達。→ 銀行融資(デット)で対応すれば、既存の経営体制も維持できます。
両者をバランスよく組み合わせる考え方も
実際の経営では、「どちらか一方に偏る」のではなく、状況に応じてエクイティとデットを組み合わせることも有効です。これにより、資金調達の柔軟性が高まり、リスク分散にもつながります。
例:
初期はエクイティで資金を集め、事業が軌道に乗ったらデットに切り替える
通常はデット中心だが、新規事業だけエクイティで外部の支援を受ける

中間的手法も紹介|エクイティとデットの“いいとこ取り”
エクイティファイナンスとデットファイナンスには、それぞれに長所と短所がありますが、実はその中間的な性質をもつ手法も存在します。「すぐに返済したくないけど、経営権も譲りたくない」という企業にとって、有力な選択肢となるのがこの“ハイブリッド型”の資金調達です。
代表的な中間型:転換社債型新株予約権付社債(CB)
転換社債型新株予約権付社債(Convertible Bond:通称CB)とは、最初は「借金(社債)」としてスタートするが、後に株式へ転換できる権利が付いた金融商品です。
特徴:
投資家は、あらかじめ定められた条件で株式に変えることができる
企業側は、初期段階では利息を支払い、将来的には株式化され返済義務がなくなる
資金調達の段階では“負債”として計上され、バランスシート管理もしやすい
簡単に言うと:「はじめは借金 → 将来は出資」に切り替えられる“便利な橋渡し的手段”です。
中間型ファイナンスのメリットと活用例
メリット:
すぐに株主を増やさずに資金を調達できる
将来の企業価値を高めてから、有利な条件で株式へ転換してもらえる
初期の資金繰りに余裕を持ちつつ、将来的に自己資本を強化できる
活用されるケース:
スタートアップが「今すぐは株式を渡したくないが、将来的に株式上場(IPO)を目指している」
増資に抵抗がある既存株主の意向を尊重しつつ、資金を調達したい場合
注意点:契約内容の透明性がカギ
中間型の資金調達では、投資家との契約内容が複雑になることもあります。たとえば、転換のタイミングや株価の条件次第で、将来的に想定外の希薄化リスクが生じることも。
そのため、専門家(弁護士・会計士・ファイナンスの専門家)に相談のうえ、条件をしっかり設計することが大切です。

よくある質問
Q1. エクイティファイナンスは返済しなくていいって本当ですか?
A. はい、本当です。エクイティファイナンスでは、投資家から「出資」という形で資金を受け取るため、基本的に返済義務はありません。その代わり、出資者は株主となり、会社の所有権の一部を持つことになります。
Q2. デットファイナンスとエクイティファイナンスの一番の違いは何ですか?
A. 一番の違いは「返済義務」と「経営権への影響」です。デットファイナンスは借入なので返済が必要ですが、経営権には影響しません。一方エクイティファイナンスは返済不要ですが、株式を発行することで経営権に影響が出る可能性があります。
Q3. 小さな会社でもエクイティファイナンスはできますか?
A. 可能ですが、投資家を納得させる準備が必要です。スタートアップや中小企業でも、将来性やビジネスモデルが魅力的であれば出資を受けられる可能性は十分にあります。ただし、事業計画や成長戦略などをしっかり説明できる体制が求められます。
Q4. デットファイナンスはどこで利用できますか?
A. 銀行、信用金庫、
などで利用可能です。代表的なデットファイナンスには、銀行融資、ビジネスローン、社債の発行などがあります。企業の信用力や業績によって、借り入れの条件が変わります。
Q5. 株式を発行すると、経営の自由がなくなるのでは?
A. 株式の発行数や議決権の構成によって変わります。全ての出資者が経営に干渉するとは限りませんが、議決権を多く持つ株主がいる場合、経営判断に影響を与える可能性があります。経営の主導権を守るには、発行株数や種類株式の設計に注意が必要です。
Q6. 中間的な手段を選ぶのはどんなとき?
A. 「返済は避けたいが、経営権も守りたい」ときに有効です。転換社債型のようなハイブリッドファイナンスは、柔軟に資金調達したい企業に向いています。ただし、契約条件が複雑になりやすいため、専門家のサポートを受けるのがベストです。
【まとめ】資金調達の手段は“企業の未来”を左右する選択
この記事では、エクイティファイナンスとデットファイナンスの違いや特徴、メリット・デメリット、使い分けのポイントまでを初心者向けに解説しました。
あらためて、重要なポイントをまとめます:
エクイティファイナンスは「株式を発行して資金を集める方法」で、返済不要・出資者は株主になる
デットファイナンスは「借入で資金を調達する方法」で、返済義務あり・経営権に影響しにくい
どちらも一長一短があり、自社の成長ステージや経営方針に合わせた選択が重要です。また、**中間的な資金調達手法(転換社債など)**も視野に入れることで、より柔軟な資金戦略を組み立てることができます。
「どの資金調達方法が自社に最適か?」を迷った際は、専門家や金融機関に相談するのもひとつの手段です。正しい知識と判断力が、企業の成長と持続的な経営のカギになります。
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